70%、72%、86%、88%、95%…
この割合を見ただけでピンと来る人もいるのではないでしょうか。

ここ数年、製菓業界において国内チョコレート市場が目覚ましい牽引をみせており、とくに70%以上のカカオ含有量を持ついわゆる「高カカオチョコレート」の売れ行きが好調です。冒頭の数字をパッケージに記載しているチョコレートを売り場でみる機会も多くなっていますね。
今後は消費動向が落ち着いた後も製菓メーカーは同セグメントを一過性のものとしては扱わず、中長期な視野を持って商品開発・販売を行なうとみられています。

近年の好調な高カカオチョコレートの国内市場は突然沸いたものではなく、いくつかのプロセスを経てのものとなります。00年代後半、健康ブームとともに製菓メーカーが高カカオチョコレートの販売を始めましたが、カカオ含有量が多いだけで苦みの強いものが多く、味を楽しむより「健康を売り」とした商品が大半でした。
また健康面をあまりに前面に押し出しすぎたため、国民生活センターが見解を発表する結果となり、当時は一過性のブームで終わりました。

その後カカオ自体の健康効果に対する研究が始まり、ある程度妥当なエビデンスの数が集まったこと。そして何より、製法の研究が進み格段に美味しくなったことが高カカオチョコレートの好調な売れ行きに繋がりました。カカオのビターな味や香りを楽しむ、いわゆる「大人も楽しめる嗜好品」として幅広く認識されたことが好調な消費動向として反映されたとみられています。

このチョコレートの原料となるカカオ原産地で真っ先に候補に出てくる国はガーナ共和国でしょうか。ロングセラーのチョコレート商品名になっていることも関係しているかもしれませんが、実際、ガーナと日本の繋がりは強いものになっています。
現在のカカオ豆の生産量世界1位はコートジボワールで、2位のガーナの約2倍もの生産量を誇ります。一方で日本のカカオ輸入量は、全体量の80%もの割合をガーナ産が占めており、次いでエクアドル、ベネズエラと続きます。

なぜ日本の輸入に占めるガーナ産の割合がここまで高いのかについては諸説ありますが、ガーナの安定した生産能力や流通・出荷・品質管理が日本に好まれていることが大きな要因と言われています。

カカオの木は熱帯雨林気候地域にしか生育しないことに加え、光に弱い性質を持つことからバナナの木などの大樹の下の、日陰で育ちます。これは裏を返すと、広大な土地での画一的な生産「プランテーション農業」にあまり向いていない作物であることを意味します。
またカカオの木は樹齢50年程度で収穫力が低下するため、接ぎ木や苗など時間のかかる育成も必要となります。そして実の収穫から適切なカカオ豆にするためには数日間の「発酵」「乾燥」という処理を行なう必要があるため、農家に一定の知識が必要になります。

このように多くの労力を要するカカオ豆の生産ですが、嗜好品であることから市場価格の乱高下は常にカカオ農家を悩ます問題でもあります。欧州の支配が終わった後もカカオ生産国とチョコレート業界との市場価格の綱引きは続き、1980年代にカカオ価格が急落した際にはナイジェリアなど各国でも多くのカカオ農家が栽培を諦める事態となりました。

そこでガーナではカカオ豆の国内買い上げシステムを採用し、一元管理を行なうことで対抗策を取っています。
ガーナでは「ココボード」と呼ばれる政府機関を通さないと農家はカカオ豆を一切輸出できない一方で、カカオ豆の買い取り最低保証価格の制定や仲買の制定、品種・栽培の研究など農家に必要な知識や技術の提供などを行なうことで、国家事業としてのカカオ産業を構築しています。この結果が高品質カカオの安定生産へと繋がり、食の品質を求める日本への輸出割合がますます増える結果となりました。

またカカオ農園での児童労働者問題も長年改善を求められています。2000年代にアメリカで提起された、カカオ農家の児童労働問題に対する取り組み指針「ハーキン・エンゲル議定書」が提起された際にはこれらに抗戦する姿勢をみせていた業界もありました。
しかし世界的なトレンドの転換もあり、現在ではむしろ企業や団体が積極的にカカオ生産に携わる農家や児童に対する支援活動に取り組む方針へと変化しています。

安定した高品質のカカオを生産するのはとても大変です。ココアなどの既存カカオ製品にこの高カカオチョコレート市場の伸長が加わるのであれば、自然と国内カカオ消費量も増える見込みとなります。国内のカカオ消費が増えることで生産国と消費国がお互い、笑顔がみられる未来図を描けられれば素敵ですね。