今年の10月から来年5月にかけて、上野の森美術館と大阪市立美術館でフェルメール展が開催されています。現在までに真作と鑑定されている作品が35作品前後と非常に寡作で知られるフェルメールですが、今回の展示会では8作品と日本での過去最大の展示数となり大きな話題となっています。
フェルメールの絵画は巧みに消失点を使用した構図なども特徴的ではありますが、著名なのはやはり色遣いでしょうか。とくにラピスラズリに含まれるウルトラマリンという顔料を使用した青色は「フェルメール・ブルー」とも呼称されているほど世界中の人々を魅了しています。

「光の波長の反射率が物質の色として映る」これは発光物を除く、人間が色を視認する基本原理ですが、そんな理論が判明する遥か前から有機/無機を問わず、顔料や染料は人々の生活とともにありました。藍やベニバナなど日本で使われてきた植物染料もシルクロードから渡来してきたといわれています。また10世紀前後からヨーロッパでコチニールが染料目的として飼育されていた記録が残っています。
これらの色素品は古くはローマ帝国時代から大航海時代を経て現在に至るまで、長きに渡り香辛料やシルクなどとともに非常に高価な交易品として重用されてきました。

この歴史を遡ると鉱物を砕いて装飾のために使用していたとみられる石器が遺跡から発見されており、最古のものは40万年前頃のものと推測されています。また偶然にも同じく40万年前の人類とみられる骨がスペイン北部の洞窟から出土されており、2014年に研究チームにより初めて、この年代の遺物からのDNAの抽出と解読がされたことで話題になりました。

そして色素の歴史はさらに遡ることになりそうです。これまでに発見されていた最古の色素は先カンブリア時代にあたる約6億年前のもので、この時代より以前のものは遺物すらほとんど発掘されておらず謎に包まれていました。
今年7月に発見された今回の色素はサハラ砂漠から発掘されたものですが、シアノバクテリア由来とみられるこの色素はなんと推測11憶年前。西アフリカに位置するタウデニ盆地で掘削を行なっていた石油会社が掘削分析を行なった土から偶然発見されたそうです。

シアノバクテリアは別名藍色細胞とも呼ばれますが、今回発見された色素は藍色ではなく明るいピンクに近い色をしているそうです。フェルメール好きの人にとって青が特別な色であるように、考古学者にとってのピンク色もまた特別な色になるのかもしれません。