今月の15日、アメリカの実業者のポール・アレン氏が逝去されました。アレン氏はビル・ゲイツ氏とともにMicrosoft社を立ち上げた共同創業者として有名ですが、2000年に退社してからは自身の財団を通じて各種慈善活動を行なっていました。またアレン氏は兵器遺産の収集及び探査家としても著名で、とくに沈没した巡洋艦や戦艦などの海底探査プロジェクトチームを立ち上げ、数々の沈没船を発見しています。
2015年には、レイテ沖海戦に向かう途中に沈没したと言われていた戦艦「大和」の姉妹艦である戦艦「武蔵」をフィリピンはシブヤン沖の海底1000m付近で発見し、YouTubeなどで実況中継を行ない話題となりました。

過去に海底へ沈没した船や飛行機などを目当てに潜るものをレックダイビングと呼び、ダイバーの間で人気のジャンルの一つとして定着しています。前述した戦艦武蔵のように大概の大型船は深海まで沈没することが多いのですが、ごく稀にダイビング可能な水深数十メートル付近に沈船が留まるケースがあり、格好のレックダイビングのスポットとして観光資源となることもあります。

例えば世界的に有名なレックダイビングスポットとして、バヌアツ共和国にあるエスプリットサント島沖の沈船プレジデント・クーリッジ号が挙げられます。輸送船として徴用され1942年に魚雷によって沈没した輸送船ですが、全長201mを誇る巨大な船体がほぼそのまま、水深20~40m付近とダイビング可能な地点に沈船として残されており、世界中のレックダイバーが数多く訪れています。

最近ではダイバー誘致を目的として様々な国で、役目を終えて引退した船や車両、飛行機などを沈めて人工的なレックポイントを作成しています。また適正な管理を行なえばレックダイビングだけでなく、浅瀬に生息する海藻や魚類にとってこれらが格好の住処となり、豊かな海中環境になりうる可能性を秘めています。

レバノンでも今年の7月に、同国の環境保護NGO団体が主導となり、レバノン軍から古い戦車と装甲車両10両を地中海に面したレバノン南部の港町サイダの海底に沈めました。この活動はダイバー誘致とともに海底公園を作ることを目的としたもので、代表者のKozbar氏は「海洋生物にとっても新たな生息環境となることを期待している」と語っています。

レバノンは地中海側に約200kmの海岸線を有していますが、海岸線のプラスチックなどの漂流・漂着ごみが問題となっており、今回のサイダ町も長年海岸ごみに悩んでいる地域でもあります。

海岸・海中環境や資源の保護と、資源利用の両面を成立させるのは容易ではなく、1962年の世界国立公園会議で「海中公園」としてのあり方が提起されて以降50年以上に渡り各国で試行錯誤が続いています。
海底公園作成計画をきっかけとして国内の海洋環境を改善したいという試みが今、レバノンで始まっています。