アフリカ大陸のサバンナ地域に多く自生するバオバブの木。サン・テグジュペリ著『星の王子さま』では星を破壊する「厄介な大木」として描かれていますが、現地の住人とそこに暮らす動物たちにとっては、長い乾期が続く過酷な環境に多くの恵みを与えてくれる非常に親密な植物でもあります。

住人から「生活の木」と呼ばれ、また神聖な植物として崇められてもいるバオバブは大変長寿な品種で、樹齢が千年を超えるものも珍しくはなく、中には樹齢6千年と測定されている木まであります。古来よりバオバブは、住居などの木材や縄・布製品などの生活用品として使われたり、樹皮を薬として用いたり、実を食したり種子から油を採ったりと様々な用途に使われてきました。特に乾期に実をつけるバオバブは、貴重なビタミン・ミネラル群の源でもあります。象やサルなどの動物もまた実を食べ、そして照り付ける太陽の木陰で憩う場所として傍にあり続けました。

このバオバブの実ですが、少し面白い性質を持っています。バオバブは幹の内部に、乾期に備えて幹に10トンもの水を貯蔵します。乾期が迫るにつれて葉を落とし、実に至るまで全ての水分を幹に貯蔵するため、実には水分がほとんど無くなります。
一方で加熱処理をしているわけではないので、バオバブの実のビタミン・ミネラル群は、元々の豊富な含有量を持ちながら加熱損傷をほとんど受けない天然のパウダーともいえる状態になります。また実の約50%を占める非常に多くの食物繊維を含むと同時に、ポリフェノールに代表される抗酸化物質の含有量が高いのも特徴です。

バオバブ原生地域の住民には長年馴染みのあるバオバブの実ですが、このような特徴から近年は栄養補助食品として流行の兆しを見せています。80年代からみられるスローフード運動から2000年代のLOHAS主義へと天然食品の需要層が広がる中で、天然の高栄養食品の需要が高まっています。
またビタミン・ミネラル・必須アミノ酸などをサプリメントとして補助的に摂取することが一般化している現代。飲み物やスムージー、ヨーグルトなどで朝食をとることの多い欧州の生活スタイルと粉末状のバオバブの実は非常に相性が良く、これらに混ぜて効率的に栄養を補える高栄養価補助食品として注目を集めています。

バオバブの実は2009年に米国食品医薬品局(FDA)が安全性を認可し、2012年には厳格な基準で知られるEUの新規食品規制の認可がされたことで、欧米各エリア内での販売が開始され入手が容易になりました。
第一次産業が主となるアフリカ地域においてバオバブ産業は高い潜在性を持ちますが、一方で作物が市場経済に載ることで現状の需要と供給の均衡が崩れる可能性もあります。サバンナ地域の象徴ともいえるバオバブが乱獲消費されることなく、産業基盤として確立できれば大きな意義となりそうです。