今年6月、女性の運転が禁じられていた唯一の国サウジアラビアで女性への運転免許証の交付が解禁されました。4日に国際ライセンスを有している女性に先行交付され、24日には般層を含めた女性へも解禁となります。サウジアラビアは内務省が国内の女性の運転を認めない声明を出してから、女性へは免許証を発行しないという方法でこれまで運転行為を制限してきました。

今回の女性の運転解禁をめぐる背景は以前記事『女性が運転する権利を認めるサウジアラビア』で取り上げましたが、ムハンマド皇太子が示した「ビジョン2030」に沿って女性への免許交付がなされたことに、国際メディアは「女性抑圧からの変革へ大きな一歩」として概ね歓迎の姿勢を示しています。

初月は保守派の動向を見据える観点もあり、交付は走行練習する必要がほぼない国際ライセンス保持者や運転経験者に限られたといわれています。政府はこれまでの詳細な交付人数を公表していませんが、免許証を交付された女性は数千人とみられています。一方で申請中の女性が12万人を超えていることは公表しています。

申請数が大量である事実を政府が公表したことには、女性の運転解禁の姿勢をより明確にしたと捉える見方が有力です。これは国内の混乱が少なかったことに加え、各団体や国際企業がバックアップしたことも要因となります。
サウジアラビア・モータースポーツ連盟で初の女性メンバーであるAseel Al-HamadさんはPR活動を積極的に行なった一人です。解禁日直前にサーキットでF1マシンを練習する光景を公開しただけでなくフランスF1GPの決勝前のセレモニーでF1マシンを運転し、注目を集めました。また免許証を交付がされた女性が初めて国内を運転する姿を各国メディアが報道したほか、SNS上において女性たちが運転する様子が数多くシェアされました。

サウジアラビア国内での女性の運転権利は保障されていく見通しにありますが、国内の異なる思想の対立はシビアなものに発展していく危険性も孕んでいます。
女性の運転解禁を求めてきた活動家の数人は現在も身柄を拘束された状態にあります。また「ビジョン2030」の達成目標は世界各国と比較すると低い水準にあるのが現状です。他方でイスラム保守派からみるとあまりに急激すぎる改革と映るのも事実です。
保守派の反発を避けるため、国内の女性の権利は「ビジョン2030」からの発展がないのではないかと見る向きも多くあります。今回の女性運転解禁をきっかけに国際世論からの女性権利のさらなる拡大を求める動きが相次いだ際に、政府が上手く対応できるのかについても疑問視されています。

イスラム復古主義運動から根強く続く国内の保守派の価値観と、予測される国際的な女性権利拡大の要求圧力。サウジアラビア政府が双方に対するバランスを今後どのように取っていくかが注目されています。

(18/08/20:画面レイアウト修正)