“Beirut Lebanon” By:Paul Saad CC BY-NC-ND 2.0

2017年5月、ベイルートでは「Heaven Sent」、日本語で「天から」という映画が公開されました。映画は、1975年から始まり、15年もの間続いたレバノン内戦を基に作られていますが、戦闘のみを描いたものではなく、内戦を通してレバノン人が受けた影響と内戦によって生まれた感情や志向にフォーカスしています。内戦後は、他者への不安や恐怖が増し、その結果差別にまで至ったという事実も映画で表現されています。レバノン人が実際に抱いている思いと共通する部分が多かったため、大ヒットとなりました。

内戦による死亡者は20万人以上、難民は4万人以上、行方不明者や逮捕された人は2万人近くに上りました。その影響をいつまでも忘れないため、「ウィサム・シャラフ」氏が脚本、監督を務め映画に残しました。映画には、長年にわたり内戦下で生きてきた人々がどんな影響を受けたのか。心に刻み込まれた気持ちが現在、どのように変化しているのか、が描かれていることで注目を浴びています。

シャラフ氏は1973年レバノン生まれ。内戦が始まったときは、まだ2歳でした。そして、1998年になると、フランスへ移住しました。内戦下で育ったことは、人生に大きな影響を及ぼしました。自分と同じように内戦によって、大きく影響を受けた人々が、それを乗り越えることを願い、映画を作りました。彼によると、現在、国は安定しているとは言えません。平和で活気のある町に見えるかもしれませんが、小さな揉め事が起きただけでも、人々の心に影をひそめていた感情が現れ、たちまち規模の小さい内戦へとつながってしまいます。宗教、宗派の自由や人権を侵し、人種差別につながることもあります。そういった状況を映画を通して伝えました。

レバノンはまた、1943年までフランスに統治され、独立後、治安が安定することはありませんでした。長年の戦争のストレスで再び内戦が発生しても不思議ではない治安状態であると言えます。

内戦が終わっても、人々の心に長い間閉じこめられた不安や恐怖は簡単に消えません。新たな戦争の火種にならないよう、過去を乗り越えることの重要さをシャラフ氏は映画を通して伝えたかったのです。