430チャンネルにもなるテレビ事情:中近東諸国

“増え続ける民間のテレビ局”

20年ほど前までアラブ諸国のテレビチャンネル数は少なく、すべて政府によって所有、運営されていました。これらのチャンネルはまだ存在しますが、政府が「政府管轄から切り離された2番目のチャンネル」を作り出してから状況が大きく変わりました。この傾向は1990年代の衛星放送の広がりによって著しくなり、2004年から2007年の間にアラブ衛星テレビチャンネル数は現在の430チャンネルに270%増えました。
政府以外が作ったチャンネルは日に日に増えており、メディア評論家は「混乱状態」と評すほど。音楽、スポーツ、ドキュメンタリー、子供番組や映画などあらゆる専門チャンネルがあり、収入源を増やすために視聴者からのテキストメッセージを流すところも数多くあります。これらのチャンネルはほとんど湾岸諸国とレバノンに存在しますが、イラクにもサダムフセインの統治が崩壊してから何百ものチャンネルが沸くように生まれ、何億円もかかる維持費を誰が出しているのかと疑問視されるほどです。
チャンネルの増加はアラブの人たちの知識を広げ、政府系だったときには禁止されていた世論の形成に貢献したという分析がされる一方で、完全に自由なメディアまでの道のりはまだ遠いとする人たちもいます。他国の独裁を批判しながら、自国の独裁や民主主義の欠乏には触れないチャンネルがまだ多いと言います。注目に値すべきはレバノンのAl Manar TVのように、政府に属さないメディアの組織としての地位を確立し、政党の演壇の場を提供するなどのチャンネルが出来たことです。しかしほとんどの政治チャンネルはトークショーに徹しています。アラブの衛星放送が増加しているにもかかわらず、高い視聴率を誇っているのは少ししかなく、カタール王室の支援を受けているAl Jazeera、サウジの民間団体が所有するAl Arabiyaや、政府所有のAbu DhabiやDubaiなどがそうです。
数百のチャンネルがありながら、アラブ情勢を世界に知らせることは出来ずにいる、と言う評論家もいます。Al Jazeera以外、英語のみで放送されているチャンネルはほとんどありません。逆に、アラブ世界に進出し影響力を持とうとしている世界のスーパーパワーはそれぞれのチャンネルを持っています。アメリカがイラク侵攻のあとに作ったAl Hurra (自由)、イギリスのBBC Arabic TV, フランスのFrance 24、ロシアとイランの放送などがあります。しかしアジアのチャンネルはなく、東アジアと西アジアの距離をいまだ感じさせます。
日本で流れる中近東・アフリカのニュースといえば、テロや暴動などのネガティブな情報ばかりで、中近東・アフリカ=怖いというイメージが先行してしまいます。実際にこれらの地域を訪れてみると街の人々は親切で温かい人が多く、その独特の文化に魅せられます。日本においてこれらの国々からの情報が少なく偏っているというのは事実です。この距離が少しでも縮められるためにも、身近な「今」のニュースを今後もお届けできればと思います。
(パンオリエントニュース)